ぼくのほそ道

サイエンスとかアートとか自然とか仏像とか生物とか・・・。僕の知り合いの人は読むの非推奨!

「世界一のクリスマスツリーを中止」プロジェクトに物申してみる

私はいちおう自然保護の専門家といえる立場で仕事をしています。自然保護活動を行う市民によくいるタイプとして、「感情に訴えるだけの人」「自然保護と動物愛護の区別がついていない人」などがあります。

これの新種が出たので記録しておきます。「動物愛護」の類型で「植物愛護」とでも言うべきか。

www.change.org

 

富山県から神戸に木を運んで、それを世界一のクリスマスツリーにするというプロジェクトを中止したい団体が署名を集めている。その理由は以下のとおり。

1・「建物を作ることや神事のような生活や社会に必要と思われる目的を持っていません」

2・「本来こうした大きな木は自治体などが保護すべき公共的な価値を帯びています」

3・「地域の人々の共有財産を傷つけ(る)」

4・「生命を軽視している」

 

私の反論を書き留めておきます。

1・クリスマスツリーにするためだけの理由で木を伐ってもいいじゃないか。たとえばニューヨークのクリスマスツリーは、そのためだけに毎年伐られ、クリスマスが終わったら木材として活用されています。おなじことでも日本ではやってはいけないの?それとも「世界一のクリスマスツリー」サイズの木だからだめなの?ちなみに欧米では、部屋に入るサイズのクリスマスツリーが大量に伐採されて売られています。それがクリスマスの伝統文化というものです。というかクリスマスだって「神事」です。日本人だってえびす祭では笹を切って使います。

2・樹齢150年のアスナロってそんなに大したもんじゃないです。このくらいで保護していたら日本の林業は破滅です(すでに破滅しているかどうかはさておき・・・)。ほんとうに保護すべき大木は自治体が「保存木」などとして保護しています。保存木の例を調べてみたらいい。樹齢150年のアスナロってそんなに大したもんじゃないって分かると思います。諏訪大社御柱祭で伐ってる大木のほうがよっぽどすごい木なのです。

3・アスナロはふつうに植林される木です。林業のために植えたり伐ったりするのです。地域の共有財産じゃないです。むしろ、不振にあえぐ林業者からみたら、こうやって買い手がついたのはプラスなのかもしれません。

4・人間の活動は、残念ながら他の生命をうばうことで成り立っています。富と権力を誇るために大きな建物を建てる人がいれば、そのために大木がたくさん伐られます。このプロジェクトも「世界一」なんて銘打ってるくらいなので、何かを誇りたい人がやってるんでしょうね。そのために一本の樹木の命が犠牲になりました。世の中ってそういうもんだと思います。