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ぼくのほそ道

サイエンスとかアートとか自然とか仏像とか生物とか・・・。僕の知り合いの人は読むの非推奨!

アユタヤから鉄道で北へ向かう。もうひとつの世界文化遺産であるスコタイの遺跡を訪れるためだ。しかしその旅にはいろんな落とし穴があり、その体験は、「わけのわからない人生がいい」という私がぼんやりと目指すところへゆらゆらと運ばれていくことになった気がする。ちなみに私は立派な人になりたいとか何ごとにも動じない悟りを開きたいみたいな大それたことはぜんぜん考えてなくて、おもしろいことをおもしろいと感じられるような、そんな人になりたいのである。

 最初の落とし穴は鉄道の遅延である。それ自体はガイドブックやネットの情報で教えられていたので特におどろくに当たらない。アユタヤの駅はそれなりに風通しのよい日かげなので、のんびりと露店のマンゴーなどを食べながら待ってるだけでよいのである。そしておよその到着時間を駅員が黒板に書いてくれるので、精神的な負担は少ないのである。

 さて鉄道に乗り込む。私はちょっと奮発して2等の座席を取ったので、それなりに快適な環境である。なぜか食事も出てくる。しかしそのレトルトパック的な食物は死ぬほどまずい!食べ物に好ききらいのない私を持ってしても、食べられるレベルに達していなかった。タイの食べ物はどこでなにを食べてもおいしいはずなのに、これはきつかった。たぶんレトルトパックの技術の問題なのかもしれぬ。

 2等車はこわいくらいエアコンが効いている。バックパックから長そでのパーカーを出してしのぐ。しかし発車して1時間くらい経つと、だんだん気温が上がり始める。車両のエアコンが唐突に故障したのである。今度はサウナ状の車内でひたすら耐える。近くの駅に停車して修理を試みているようだが、1時間経ってもぜんぜん直らない。仕方ないのでそのまま発車するようだ。しばらくしたら車掌がやってきて、きっぷを見せろという。そしてきっぷになにかタイ語で書き込むが、なんのことかもちろん分からぬ。時刻表の2時間遅れで目的地のピサヌロークへ到着。駅員にそのきっぷを見せると、きっぷ売り場へ連れて行ってくれた。そしてきっぷ売り場で、なぜだか150バーツをもらう。そうか、これはエアコンが故障したための払い戻しみたいなもの?たぶんそうなんだろう。

 ちなみにタイ人はお金への執着がとても薄い気がする。この翌日バスに乗ったときも、だまってたらぜんぜん分からない10バーツの払い戻しがあったし、食堂のおばちゃんがカタコトの英語で「ワンフィフティー」と言ったように聞こえたから「ワンフィフティー?」と確認すると、「ワンフィフティーン」と訂正してくれる。外国人観光客の僕が勘違いしたんだからだまって150バーツを取ればよいのに、正しく115バーツと言うのである。このときは僕も間違っていて、たとえ「ワンフィフティー」と聞こえたとしても、「ワンフィフティーン?」と安いほうの選択肢を使って聞くべきなのである。これは発展途上国における鉄則で、さもないとこれ幸いと高いほうの料金をふんだくられるのである。しかしタイは違った。この正直さはすばらしいと思った。

 ピサヌロークのゲストハウスへチェックイン。日本円にして1500円も払えば、エアコンとホットシャワー付きという快適な宿に泊まれるのだ。さて夕食は何を食べよう。近所にレストランが見当たらないので、仕方なく駅前の屋台街に行く。屋台の衛生状態を危惧するヘタレ旅行者の僕は、屋台では安全そうなものしか買わないようにしていたのだが、このときは仕方ない。なるべく清潔な屋台から、なるべくちゃんと火が通ったごはんものを買って食べる。そして、肉を竹串に刺して焼いたやつを何本か買う。竹串ごと火であぶってるんだから当然衛生的である。油ぎとぎとのお皿を介さずに食べられる食品を選ぶのである。200円もあれば相当腹いっぱいだ。こういうところでも、外国人からぼったくってやろうというお店がないのがタイのいいところ。

 夜、ポロシャツを洗濯する。しかし湿度が高いので、朝になってもぜんぜん乾いておらぬ。ちょっとかなしい気持ちで湿ったポロシャツを着用して旅立つ。しかしこれは、まったくたいした問題ではないことをのちに思い知るのである。宿を出てバスターミナルへ向かう。泊まった宿は鉄道駅からは徒歩圏内であったが、バスターミナルに行くには三輪タクシーのトゥクトゥクを利用しなければならない。このあたりの公共交通機関の接続のわるさが発展途上国の特徴であるように思う。さてバスターミナルで、スコータイまでのきっぷを買う。窓口のおばさんに、「ニュースコータイに行くか、それともオールドスコータイか」と聞かれる。行きたいのは世界遺産の廃墟のスコータイだから、オールドスコータイと答える。きっぷを買って少し待っているとさっきのおばさんがやってきて、「今日はオールドスコータイはクローズドだ」という。町がクローズドってどういうことよ?意味はよく分からないが、とにかくバスは止まらないらしい。しかたなく新市街のニュースコータイまで行って、バスを乗り継ぐことにする。このとき、運賃の差額で40円くらいを返してくれる。このあたりのお金に対する律儀さはタイのよさである。

 さてニュースコータイからバスを乗り継ぐわけだが、そのためのバスターミナルが離れているため、またトゥクトゥクに乗る。バス料金は安いんだがトゥクトゥクは距離のわりにけっこう高いので、このあたりがもんだいである。あとから考えると、ピッサヌロークでレンタカーを借りるのがいちばん便利で経済的であった。

 さてトゥクトゥクでバスターミナル間を移動していると、どうもスコータイの町が騒がしい。お祭りのようである。お祭りというか、スポーツの試合前のような熱い雰囲気。道端に立っているおばさんから、いきなりバケツで水をかけられる。しかも走っているトゥクトゥクの客席の僕にかかるように計算された無駄のない攻撃である。かなりプロっている。そう、今日はタイの新年の、いわゆる水かけ祭りの日だったのだ。

(つづく)