ぼくのほそ道

サイエンスとかアートとか自然とか仏像とか生物とか・・・。僕の知り合いの人は読むの非推奨!

むかしより今がいい

「むかしはよかった、今はだめだ」って言うおっさんがよくいるが、僕は決してそうは思わない。世の中も文化も、むかしより今がいい。ほんとにそう思っているし、そうじゃないといけないし、やっていけないと思うんだ。

本阿弥光悦は、「むかしの芸術品はよかった、今の人にはよいものは作れない」という人を批判した。今の人でもいいものは作れるし、むしろ超えていかないとだめだってこと。

岡本太郎はさらにラディカルに、「法隆寺は焼けてけっこう、自分が法隆寺になればいいんだ」とまで言い切った。どんなに大事に守っても、むかしのハードウェアはいつかは失われてしまう。その悲しさを受け入れたうえで、自分が芸術の一端を担っていくと決意しなくちゃならない。こういう意味で楽観的悲観主義者として生きねばならぬと言うのである。

文化・思想の点でも、むかしより今がいい。たとえば古典的ディズニーアニメのヒーロー・ヒロイン・悪役のステレオティピカルな役割とか、美女と野獣にみられる画一的な美vs.醜という評価軸とか、僕はむかしからきらいだった。シュレックが登場し、子供にもわかるアンチテーゼとして古くさい考え方を一蹴してくれたのはまさに痛快だった。

アンパンマンの単純で画一的な勧善懲悪や暴力主義も僕の大きらいな古くさい思想である。その点、はなかっぱはアンパンマンに対する強力なアンチテーゼとなっている。人間関係の構図はアンパンマンのパロディとも言えるくらい似ている。たぶん確信犯的に似せている。それでいて、思想の面では鋭く対立している。まず、暴力や怒りで問題を解決しようとしない。勇気とか仲間とかチームワークとかそんな大上段の理想主義を出してこない。アンパンマンは自分の思想を「完全」だと思っていて、それを敷衍し、反対者に押し付けるために生きている。はなかっぱは、はなはだ不完全で、自分自身が「どんな花を咲かせるか」すら分からず、だからこそ日々成長するのである。

ナチスドイツがユダヤ人を迫害したのをドイツ国民が喝采したような気持ちと、アンパンマンがバイキンマンをたたきのめす様子は、異文化を認めないという点で酷似した構図じゃないかと思うのである。

ちなみに、むかしの絵画の建前主義を公然と批判して見せたマネも好きだ。えろい気持ちで裸の絵が見たいけど、それに神話という建前をかぶせていた当時の絵画。ティツィアーノの裸体画とおなじ構図を使いながら建前を取り去って、えろいものをそのままえろ画像として公共の閲覧に供したマネさんかっけーと思うのである。