ぼくのほそ道

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「三大大仏」の三体目は果たして? 兵庫大仏 能福寺

 

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平清盛が平安末期につくろうとした福原京があった場所は、現在の神戸市兵庫区を中心としたエリアになります。JR兵庫駅から海岸までのエリアは基本的に何の変哲も無い都会の住宅地といった風情なのですが、清盛が後白河法皇を幽閉した寺があったりして、なんとなく歴史の風情が感じられるのです。そしてここには、一部の仏像マニアおよび珍スポットマニアに人気の、兵庫大仏が鎮座する能福寺があるのです。

 

「日本三大」と名のつくものはいろいろあります。メジャーなものでは日本三景(宮島・天橋立・松島)とか、三霊山(富士山・立山・白山)があります。あまり耳にする機会のないものでは、少年文学マニア的観点からの三大名探偵というのまであるようです(出典はWikipediaの「日本三大一覧」です)。

 

日本人はこういうのが好きですね。気質として、「日本一の○○」と名乗るのはちょっと気がひけるしライバルとケンカになりそうだけど、「日本三大○○」なら謙虚さとアピール力のバランスがちょうど良いのかもしれませんね。

 

そして三大大仏です。最初の二体には異論はなく、とうぜん奈良の大仏と鎌倉の大仏が挙げられるわけですが、問題は三体目です。この三体目に名乗りを挙げている大仏が全国に複数あり、認定は困難を極めるのです。大仏の場合、奈良・鎌倉に次ぐ三体目に認定されれば、超一級の国宝である奈良・鎌倉の大仏と同列に扱ってもらえるという俗っぽい気持ちもあり、各大仏さんは積極的にアピールしてるのかもしれませんね。

 

さて、兵庫駅から南へ。国道2号線を渡って5分ほど歩くと、住宅地のなかで瞑想にふける兵庫大仏が視界に飛び込んできます。ここが能福寺。

 

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大仏さんは鎌倉と同じく露座(大仏殿がなく、青空の下におられる状態)ですが、けっこうな高さの土台の上に座っておられます。だから二階建ての邸宅の上に顔を出すことになってるんですね。

 

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訪れたのが休日ということもあり参拝者はかなり多く、家族連れで写真を撮ったりというのんびりとした雰囲気を出しています。しかしこの大仏さん、手の形(印相)が禅定印なんですね。この形は、大仏さんがひとり静かに座禅を組んで瞑想にふけっていることを表しています。住宅街の真ん中で大勢の参拝者に写真を撮られまくっている状態で集中するのはたいへんなことだと思います。おつかれさまです。しかし横から見ると、なんとなくこっちを見てて目が合うような気がしてちょっとこわいです。見てないようで見てるのね。心を見透かされているようで、悪いことはできないなあ、なんて思ってしまいます。

 

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しかし、人間は勝手なもので、感じる大仏さんのありがたさは、本体の造形だけでなくまわりの環境にも左右されてしまいます。

 

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奈良の大仏は世界最大級の木造建築である大仏殿という最高の環境に存在するし、鎌倉の大仏は露座とはいえ、小高い緑の岡の前に存在しています。借景という言葉があるように、大仏をながめると必然的に目に入ってしまう周囲の景色というのは大事なんですね。小高い中層マンションを借景にしていたのではなんとなく違和感を感じてしまいます。このあたりが珍スポットとして挙げられるゆえんなのかもしれません。しかし兵庫大仏は、そんな僕の感想なんて関係なく、ひたすら瞑想にふけっておるのです。